2008-05-31
阿木津 英 歌集 『青葉森』(短歌新聞社 952円+税)
わたしが短歌を作りはじめることになった頃、昭和二十年代前半生まれの女性歌人が次々に第一歌集を出していて、その中の出色の一人が本著の阿木津英である。雛歩きをしながらもかつて味ったことのない衝撃とこのような表現の世界があるという言い知れぬわくわく感を覚えた私事を俄に思い起こさせる『紫木蓮まで・風舌』『天の鴉片』と『白微光』『宇宙舞踏』その後九三年から九九年までの作品から本集は成る。
〈産むならば世界を産めよものの芽の湧き立つ森のさみどりのなか〉と爽やかに言挙げした時から「歌とは、女とは何か」を苦しむように作歌してきた足跡の一冊。
柿の木の芽吹きの時に遇いにけりみどりは春に汚るるらしも
『紫木蓮まで・風舌』
窟(あなぐら)の扉(と)をおしひらき明るさよ秋かんばしき町に入り行く
(一九九九)
溜めている熱い息を吐くとき、常に靜か。
(新刊・歌集紹介 松沢陽子)
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